予兆編
- 経過
- R1をアップハン化したのは99年の秋だ。翌年に結婚したのでいろいろ忙しくなり、それからほとんどR1の距離は延びていない。時間の空いた時に近場を走る程度で、以来もっとも遠出したのはユーザー車検に松本の陸事に出向いた片道100キロ程度という悲しさ(この時の車検で構造変更審査を受けて晴れて公認車両に(^_^;)。
整備に時間も取れないなか、操作系のグリスアップ、チェーンの給油と張り調整だけで、高松〜小豆島の旅は出発の夜を迎えた。

- 11/1
- 出発
- 高速道路でも楽な姿勢を取れる恩恵は大きい。MRA製のスクリーンに換えたとは言えノーマルポジションに比べて風圧は強いが、自分にとって楽な姿勢で受けられるので逆に疲労にはつながらない。ハンドルの防振もきちんとできていて実に快適だ。前傾がきついと寒い時期には首回りや袖口、すそからの風の侵入が気になるが、姿勢が自然なのでそれもなくて心強い。長距離の移動には間違いなく武器となっている。
ただし今回、装備類などタンデムシートに積む荷物の量が多くて、さすがに操縦性への影響は否定できない。もともと柔らかめのサス設定が好みというのもあるが、少し落ち着きの無さが出て直進性が悪くなっている。まあ、怖くない範囲だ。
運悪く雨にも降られたが(夜の雨の高速って最悪の条件(^_^;)ペースを上げてもR1の操縦性は信頼できる。
- 加藤汽船にて高松入り
- 神戸発5時高松9時着のフェリーでまず四国に渡った。航路は小豆島の横を通るが3年ぶりに見るその景色はやっぱり懐かしい。またここを走れるのかと思うと、今からワクワクしてしまう。当時、知人の勤めていた会社の別荘が小豆島にあって、数年に渡って毎年5月の連休に仲間連中で泊り込んで島中を走り回っていたのだ。
走りの旅は、高松の五色台と小豆島を巡るのが目的だが、フェリーの便数の関係で高松に乗り込むのが都合がよかった。
- 五色台へ
- とりあえず荷物は高松駅のコインロッカーへ預け、R1はやっと身軽な走り仕様の状態に戻った。早朝のフェリーだと船内の売店は営業していないので、降りてから途中で見つけたうどん屋で少し遅め(10時ぐらい)の朝食を取り、そのまま五色台スカイラインに上がった。紅葉時期で葉が落ち始めていると走りにくいのだが、まだその心配は無いようだ。
数回往復して3年ぶりの道も思い出し、ペースを上げ始める。事故など後が絶たないのだろう、コーナー手前のペイントが以前より増えて危ない場所もあるが、それらを差し引いてもまだまだ十分楽しめる場所だ。
ところでR1をアップハン化する以前、99年の夏に(エイジュウのハンドルアップキットを付けていた時)一度五色台は走っている。実はその時の経験を元にアップバーハン化に踏み切った訳だが、果たして結果は…。今回の旅はその答えを確認するのが大きな目的のひとつだ。
ノーマルR1は一般的にポジションはコンパクトという評だが、やはりそこは外国人向けの身長設定で、173cmの自分の場合、腰を引いて伏せてもシートストッパーに尻は届かない。
個人差はあるだろうが、自分はかなり腰を引きながら尻をずらす方なので、ヒザを擦る事自体は楽勝なものの、ハングオフ時に外側の腕がいっぱいに張ってしまって上体の余裕が全くなく、左コーナーだとアクセル操作に支障をきたすほどだった。
これらを解消するには、ハンドルを手前に位置させる方法と、ステップを前に出す方法が考えられたが、自分のライディングスタイルは後輪コントロール重視でぐいぐいアクセルを開けるタイプなので、しっかり荷重が掛かるようにステップはあまり前に出したくない、という考えから、ハンドルを手前に引くアプローチを取ったのが今回のアップハン化という訳だ。
ハンドル位置の決定も前後荷重のバランスを一応考えて決めており、それはノーマルポジションの場合の肩とハンドルを握る手を結ぶ、一直線上のどこかに新たにハンドル位置を持ってくる、という決め方である。こうすることで、伏せた時のノーマルとアップハンの姿勢の違いというのは、ヒジの曲がり方の違いだけとなる。座る位置さえ違えなければ、ノーマルとほぼ同じ前荷重を掛けることが可能、と読んだのである。
そして実際の五色台走行では、全く満足の行く感触だった。
両腕の操作系に余裕があるので、ハンドルに無理な力が掛からず、コーナリング中に何かあった場合の操作の自由度も上がり、荷重の掛け直しもしやすい。パンパンに固まったフォームとはやはり違う。
ただ気を付けなればいけないのは、本質的にレプリカのディメンジョンは何も変わっていないという事。ネイキッドでは可能な、ハンドルをこじり回すような乗り方ではきちんと走らない…いや正確には、走れるけど決して速くはない。掴み易い位置にハンドルがあっても、決して力を入れずに下半身で上体を支える、これ基本。逆にこのポイントだけ押さえておけば、本当にこのバイクを自由自在に振り回す事が可能だ。
大いなる満足を手に入れてしまった自分には次に欲しいと思うバイクの姿なんて見えない。これ以上に何を望むというのか?今のR1に足りないものは叩いて減ったタンク容量ぐらいなもんである(笑)。
この日は、寒い上に天候の状態が不安定で、時々雨が降ったり陽が差したりを繰り返したが、夕方近くまで五色台を走りまくる。
同行は伊藤浩一氏(Buell XB9R)。五色台での試乗記はこちら
- 屋島第一健康ランド
- 高松に以前からの知人がいて、夜は健康ランドで一泊という話になった。泊まる事を考えると安いし食事もおいしいと文句無い。毎朝チェックアウトさえすれば連泊もOKだ。人がいっぱいいても平気、という向きには無条件でオススメ。
ちなみにその知人、この夏にFZS1000に乗り換えているとの事で、明日は半日ほどバイクで付き合ってくれるそうだ。
一般的にはR1のネイキッド版という言われ方のFZSだけど、ホントの所はどうなんだろう。まだ乗った事が無かったので、アップハンのR1との比較試乗が興味深い。
楽しみだ。
- 11/2
- 五色台へ(その2)
- 初めて乗ったFZSは素直な挙動のフロント回りが非常に印象的だった。まだ2000マイルしか走っていないそのマシンは、エンジンは静かでとてもR1と同じユニットとは思えない(よく見るとぜんぜん違う型使ってんだけど)。ワシのR1は結構回しているせいか、比べるとガシャゴシャとラフな音を立ててる(笑)。もしかしたら、FZSは防音にも気を使っているかもしれない。
ただ、カラ吹かししただけでクランクマスが増えた事がわかるほど吹けが遅く、車重も増えて挙動も穏やか、と、全てにおいてマイルドに振られて乗りやすいその味付けは、ネイキッド群の中ではズ抜けた性能なんだろうが、普段からR1に乗っている身には「普通のバイク」と思えてしまう。
視線の先に他社のネイキッド群があるのは間違いない。それらとの比較で個性が出るように作ってあると思われた。
ポジションも、アップハン化したR1の異様なまでのコンパクトさに比べると全く別のものだし、30キロもの車重差は走りの性能を比較しようという気にならなかった。あくまでスポーティなネイキッド、を求める向きにはオススメだろう。
ところで知人がR1に乗ったコメントは「車体剛性の高さを感じる」というものだった。他のリッター車に比べると車体がヤワと言われているR1にしてこの印象は、FZSがどんなバイクなのかは推して知るべしか。
かなりデキがいいとは思うけど、やっぱFZSを選ばずにR1をアップハン化した事は自分にとって大正解だったという思いを強くした。

- 宮武うどん
- 知人の案内で坂出にある「宮武うどん」へ。その知人が「ここらで一番うまい」と言っていたのでそりゃ日本一って事か?
午前11時前だというのに店の前から通りに面した道路まで人が並んでしまってマジかよ状態。「ひやあつ(麺は冷えてて汁が熱い状態)」で食べるのが通らしい(?)。
- いよいよ小豆島へ
- 高松から小豆島へはフェリーで約1時間。1時間に1本づつ便が出ており(到着する港は違う)バス感覚だ。うどんを食べたばかりだったが、比較をするつもりでフェリーの中でも頼んでみた。やっぱ全然違う(笑)。そう言えばフェリー乗り場の場所が移動して、建物も新しくなっていた。
- 宿探し
- 天気がいまいちなので小豆島内で一泊するか或いはちょっと走ってそのままフェリーで姫路に渡って帰るか、非常に判断に悩む状況だ。走り目的の旅で走れないんじゃ留まる意味はない。家に電話してヨメにインターネットで予報を調べてもらい、結果は微妙な状況だったが、こういう機会もそうは取れないだろうと思い切って泊まるように決めた。運が良ければ明日は午前中は晴れて走れるはずだ。
- 荷物を降ろし、軽くひとっ走り
- 宿も確保して荷物だけ降ろし、もう夕方近かったが、晴れていたのでひとっ走り出る事にした。小豆島は海岸に沿ってぐるっと島を一周できる他、標高約800mの寒霞渓まで、島の三方から駆け上がる道がある。考えてみると結構な勾配だ。
まずは寒霞渓までひとっ走り。後輪に荷重が増える上りはどんなバイクでもアクセルが開けやすいものだが、アップハンのR1はブラインドの進入でも視線を高く保てるので先読みがしやすく思い切った突込みが可能だ。
立ち上がりでアクセルを大開けすると上りにアップハンと相まって、前輪が不足気味の荷重から接地感の不安定さを伝えてくるが、ウィリー大好きの自分にとってはさしたる問題ではない。楽しいの一言だ。
寒霞渓に到着するとだいぶ薄暗くなっていた。ここからいきなり最難関の、大部に駆け下る道を選んで島の東側をぐるっと回って宿に帰ろうという事になった。
大部に向かっては、ものスゴい下りになっていて落ちて行くという表現がピッタリ。バイクの状態とテクニックを試すにはいいが、流すには絶対に通りたくない道でもある(笑)。アップハンの効果を試すにはもってこいだ。
下りではどれだけアクセルが開くかが勝負の分かれ目だが、開けた後には必ずブレーキングという操作が付きまとう。ここでつんのめった姿勢がどれほどハンドルに体重を掛けてしまって操作性を下げる、そしてバイクのハンドルの自由な切れを妨げてしまっているかは明白だ。こんなシーンでマニュアル通りに「下半身で体重を支えてハンドルには力を掛けない」でいられるヤツなんて、いる訳が無い。
アクセル開ければ開けるほど次にきついブレーキングが待っているので、これがみんな下りを嫌がる理由になってるんだけど、このR1なら下りもイケる!!ブレーキング時につんのめらない姿勢が、これほど実際の走行での速さに結びつくのかとあらためて思い知らされてしまう。やっぱりバイクは楽しめるの一番だよ、ホント。
- 高橋旅館泊
- 飛び込みだったので夕飯は出ず、近くの寿司屋まで出掛けて食事にした。3年前にも来た事あったんだけど、店のオヤジは憶えてないだろうなあ。
- 11/3
- 福田へ
- 朝起きて窓のカーテンを開けるとなんと快晴。これは運がいい。いったんフェリー乗り場に移動して荷物を預けて11時半の便で姫路に渡るよう計画を立てた。
2時間弱あればかなり走り回れる。昨日夕方少し走っただけじゃ全然物足りないので、これは激しいことになりそうだぜ、ふっふっふ。
荷物は乗り場では預かってもらえないのが判り、近くの土産物屋で買い物ついでに交渉して置かせてもらい(知能犯?)またまたR1は身軽な走り仕様へと変身した。
さあ、旅の集大成の走りを見せるぞ!
- UP1小豆島に散る?
- 福田港から島に対して左回りになるように出発し、家の立ち並ぶ辺りをそろそろと通り過ぎ、さあここからだとアクセルを手前からぐっと開けて加速方向で進入する第一左コーナー!
…ゴシャ!!
突然左側に転倒して、あら〜、視界からR1が遠ざかって行く〜。ワイの小豆島も終わりや((C)バリ伝)。
「なんで〜???」
ワシは転がりながらそう叫んでいた(笑)。80キロ弱からでも加速方向で転がったバイクは止まらない、本当に止まらない。対向車線を突っ切って路肩に飛び出し、更に少し先に設置されているガードレールに軽く跳ね返されてR1は止まった。
立ち上がってバイクの方に駆け寄るが、その間にも転んだ理由が全く思い当たらない。
寝かす操作に入った瞬間にコケたようだが、直線だからタイヤが滑った訳じゃない、加速方向なので握りゴケではもちろん無い(ブレーキ触ってないし)。
バイクが滑った方向を見ると、全く曲がり始めていない。進入からまっすぐガードレールに当たっている。そんなバカな…。まるで前輪がなくなったようだ。
「!」
瞬間、しまった、と思った。
乗っている視界からは気付かないほどだが、コケた辺りから一段路面が低くなっている事が分かった。
タイヤが滑って転んだ場合には、そのトレッド面に滑ったことを示す引っ掻き傷が必ず残るものだが不思議なコトにR1の前後タイヤにはその跡が全く無い。コケて滑っている間に付いたタイヤの端面の擦り傷しか見当たらないのだ。
これらから導かれるコケた理由とは、従来の転倒シーンからは全く想像のつかないものだった。
「ウィリーごけ」<マジか(^_^;
アクセルを開けながらのバンク開始のポイントが、ちょうどこの路面の段差に差し掛かったところだったようだ。ほとんど前輪が接地していない状態から寝かし込みに入ったらしい…そりゃ飛びますわ(笑)。
ここで考えられる問題が2つある。
ひとつは乗り手側の問題で、加速時には後輪重視でほとんど前輪を意識しない乗り方である事(ウィリーしても平気なのはこの為だ!)。加速方向でのコーナー進入だったので、既に意識が後輪に行っていたと思われる(爆)。
二つ目はアップハン化した事による絶対的な前輪荷重の不足。…ちょっと待て、これはハンドル位置決定時に狙った「ノーマルポジションとほぼ同じ前荷重を掛ける事が可能」と矛盾していないか??
実は矛盾していない。そう「座る位置さえ違わなければ」とわざわざ書いていたのがポイントだ。実際にはアップハンにしてから普段座る位置が随分と後ろ寄りになっていた。理由は、上体が楽になったぶんだけ下半身も楽な位置を探してしまい、相対的にステップが少し前に出る位置すなわち、従来よりも少し後ろ目に自然に座ってしまっていたのだ。
それらがこんなカタチで結果となって目に見えるとは〜(泣)。
いずれにしてもコケる奴はヘタなのさっ。修行が足りねえ。
常々「R1でコケる奴の気が知れね〜ぜ」などと言ってたけど、やっとその気持ちを知るコトができたって(ワケねーだろ)。
R1は幸いにも左ステップが半分折れただけで他には飛んだ部品が無かったので、自走で帰れそうだ。とは言っても左側は路面、右側はガードレールと仲良くなっていて満身創痍には違いないので本当に運が良かった。後からバイクだけ取りに来るなんて考えただけで大変だ。
福田港を出てすぐだったので引き返して、たまたま時間が合ったフェリーに転がり込み、とにかく姫路に渡る事を考えた。
それにしても、結果的に逃げるようにして小豆島を後にせざるを得ず、何ともあっけない幕切れ(?)だ。走り込めなくて勿体無かったという気持ちも大きい反面、案外さっぱりしたもんだった。こんなもんかもしれない。
装備類も上から下まで全滅だし、この辺りでR1も売って、一旦リセットして出直すのもいいかあ…などとフェリーの中で漠然と考えていた。

- 姫路へ
- 港の近くにレッドバロンがあったので、寄って修理のまねごともしてみたが、さほど状況は変わらなかった。機構部が擦れていてシフト操作が、動かす、戻す、という2アクション必要だ。帰り道300キロを考えるとなかなか辛いがこれも自分が原因なので我慢するしかない。
店には02R1の新車が置いてあり、じっくり見るのは初めてだった。インジェクションになってるし、これベースでアップハンを作り直すのも悪くないかな、などと思いを巡らせたりしたが、とにかくまず無事に帰り着かなくては話にならない。
- 山陽道〜中国道〜名神
- 山陽道に乗る直前にどうもチェーン周りから異音がすると思って確認すると、コケた拍子にチェーン引き部がズレて、かなり張った状態で走っていたようだ。調整すると異音も消えて一安心した。
予報だと地元は夕方には雪が降る可能性があって気温もかなり低いらしいので、こんな操作系の状態では無事に帰れるかも判らない。もう祈るしかない(笑)。
- 覆面に止められる
- 名神高速に入ると早めに防寒装備と更にカッパも着込み、シフト系の状態が悪いのでそのまま一気に帰り着くつもりでたんたんと距離を重ねていたが、多賀のSAを過ぎた所で覆面に止められた。
なるべくシフトしたくないので安全運転で走っているというのに、こういう時に悪い事は重なるもんだと情けなくなったが、出先でコケている事を話し、ワンボックスが割り込んで来たので左に避けた、と説明すると許してくれた。シフトがうまく動かないのを見て「大丈夫か」と言われたが「トップに放りこめばなんとか」とかわした。こんなところで高速を降ろされたら天候も怪しいというのに本当にどうなってしまうか分からんからな(笑)。
- 帰着
- 恵那山トンネルを抜けるとチラチラと雪が舞っていたが、青空も見えていて山際だけのようだった。かなり寒いがまだ明るい時刻に帰り着けたのは幸いだった。
高速を降りた足でそのままバイク屋に寄って、コケた事を話してから家に帰った。
とにかくなんとかR1に乗って帰ってきたが、さあ、これからどうしたものか悩むところである。
修理して乗るか、このまま売って乗り換えか…。
大いなる迷いを抱えたまま、02の冬は深まっていくのであった。