Buell XB9R 試乗記



 外車は操作系が重いと思っていたので、アクセルの軽さには驚きました。クラッチも軽かった(これは軽くするキットを組み込んでいるとか)。クラッチのつながりも自然でした。

 エンジンは感覚的にはタカタカと軽く回る、シングルなど単発系に近い印象で、軽く回る感じからあまり強烈なトルクという感じは受けません。走行中もふと気が付くと5500前後に針を持って行っており、そこからは一吹かしでオーバーラン領域、と比較的簡単に回し切れてしまいます。

 これは絶対馬力が90馬力程度、とリッタークラスのパワーに慣れた身には仕方ないかもしれません。中高速では、エンジンの低中回転を使うこともないので、2、3000程度でアクセルを大開けした時の鼓動感や、そういったものは感じる事はありません。

 ただし、感覚的な問題だけで実際にはトルクがあるのかな、と思わせるシーンもあり、それは1速で適当に引っ張った後に2速に放りこんだ瞬間、軽くフロントを持ち上げる事です。直4ではラフなクラッチ操作以外ではちょっと想像出来ないシーンですので。

 まず最初に軽く試乗して受けた印象は、車体が軽いというワリにはなんて操作感の重いバイクなんだ、ということです。
 あらかじめ決めたラインでコーナーにおっかなびっくり入って、それを外すとガードレール直行、という感じが常に付きまとい、とても超ショートホイールベースかつ、キャスターの立ったレーサーそのもののようなディメンジョンとは思えませんでした。
 数値から想像した運動性は、コーナーに入ってからもひらひらで、とてもヒザ擦りに持って行けるほど安定度は無くそしてよっぽど速度を上げて行かないとそこまでバンクさせなくても曲がってしまうのでは、という物でしたが、実際に受けた印象は、全く逆のものでした。
 唯一、キャスターの浅さからくるブレーキング時の立ちの強さが強烈に出ており(RZ以来の感覚でした(^_^;)、これも「進入に失敗できない」というプレッシャーにしかなり得ず、速度域の高いエリアでは緊張感が増すばかりです。
 総じて「とてもヒザ擦りができるようなシロモンじゃない」というのが当初の印象でした。

 フロントブレーキ自体はR1のものより握り込みで効くのでは、と思わせる強烈さがあり、とてもシングルディスクとは思えません。剛性も十分で、ブレーキング時にハンドルが取られるような気配もありませんでした。
 リヤブレーキはキットを組んで効きが上がっているという事でしたが、アップハンでかなり後輪荷重なR1に乗っているワシには自然な感じでした。前傾のキツイレプリカ乗りだと、リヤをロックさせることがあるかもしれません。

 ところで操作感の重さについては当初から「多分サスのダンピングがカタイ」と思うフシがあり、他人のバイクでありながら、ワシの感覚でサスのリセッティングを行ってみることにしました(もちろんRANちゃんの了承済み)。
 まず、シフトペダルの位置が低すぎたのでかなりアップ。つま先を入れる隙間が狭すぎるという印象は、位置だけでほとんど解消されました。シフトの操作性は、コーナーへ突っ込む時の安心感につながるので、これは結構大きかった。

 後は数回の五色台往復で、ダンピング関係は伸び縮み共にほとんど最弱位置へ。ただし、立ち上がりでアクセルを大開けした時のサスの落ち着きが悪くなったので、リヤの伸びだけは標準に対してもやや強めの位置へ。これにて大きくビューエルは印象を変えることとなりました。
 RANちゃん的にはさほどの変化ととらえられなかったようですが、ワシ的にはこの仕様で、なんと五色台をヒザ擦りバリバリで走り回れるようになったのでした。当初「とても擦れない」と思ってたことからすると、天と地ほどの違いです。実際、タイヤも端まで使い切るほど、フルバンクでの安定感も出せたつもりです。
 
 セッティングの方向は、まずダンピングを柔らかめにする事で、車体の動きを出し、操作に対する軽さを実感させることです。フロントの伸び側と、リヤの圧側はまず最弱に。これはワシのいじる全てのセッティングに通じますが、アクセルを開けた時にパッと後ろに荷重が移り、即座に加速姿勢を作り出す狙いです。ただし、この姿勢は実際にはアンダーステアですから、経験値に応じて加減します(実はシロウトほどアンダーステアを弱めてやる方向に。アクセルを大開けできるウデがある玄人の場合はパワーオーバーステアに持って行けるので、逆に更にドアンダーのセッティングにしてやるのだ)。
 今回ビューエルの場合は、ワシの感覚ではもっと弱めてみたかったのですが、これ以上調整できないので仕方のないところです。

 車体全体の動きとしては、今回はリヤの伸びを固めてやることでコーナー突っ込み時の基本的な姿勢はリヤがあまり伸び上がらず、柔らかめの設定としたフロントが相対的に沈む設定。これは後ろ乗りを意識することで更に効果が助長され、立ちが強い性格の場合は、ブレーキング時にフロントを動かしてやる事で、立ちの強さを緩和できる事があるのです。実際に、いくらかこれは効きました。

 そうしてヒザ擦り可能まで持って行ったビューエルですが、こうした走りではまた独特の印象を受けることになりました。
 まず、フロントタイヤの太さを感じるようなバンク時の印象です。言ってみれば、ドラム缶をごろんと転がすような、そんな接地面の移動をフロントタイヤに対して感じるのです。

 一般に今のバイクはリヤタイヤが太いので、車体の中心軸に対するリヤの接地面の移動は感じることもありますが、フロントに対してそういった感じを受けた事は過去ありません。どこからこういった印象を受けるのかはナゾですが、これはバイクが素直に寝てくれるという感じからは少し遠いです。

 一気にフルバンクに持って行くような状況ではさほど気になりませんが、中間バンクに落ち着けようとしたした場合には少し「おやっ」と思う違和感です。もしかするとキャスターの関係で、ハンドルが明確に切れようとするのを無意識に押さえ込んでしまっているかもしれません。

 ナゾといえば、さほどアクセルを開けているつもりが無くても、リヤタイヤがぼろぼろになってしまった事です。
 R1では大開けしてもここまでは行かず、タイヤ銘柄のせいなのか、Vツインから来るものなのか、など、ちょっと判りません。似た経験では、亀石で乗せていただいた916も、タイヤがぼろぼろになった、という覚えがありますが…。
 これが、乗り手にタイヤの状態を感じさせずに開けさせてしまっているなら、それはそれで問題なのですが、そうは言っても実際、タイヤが滑るとか、不安な挙動を伝えてくるとかもないので、何とも首を傾げてしまうところです。

 ついつい、R1などに乗っているクセでエンジン回転を高めに保持してしまうのですが、もう1速高いギヤでアクセル開け気味で走る、という方法を試してみればよかったかもしれません。コーナリング中に5000以上を保つと、立ち上がりでもあまりトルク感のあるダッシュとは行きませんでした。難しいところです。

 総じて、ワシが慣れているR1との比較になってしまうので厳しい部分もあります。
 最新国産リッタースーパースポーツは別格として、それ以外のモデルであれば確かに運動性など、十二分に優位性を感じることができますが、趣味性の高さは認められるものの、数値からくる運動性は、正直言って中高速域では誰にでも引き出せるものではない、という感じです。キャスターの立ちとホイールベースの短さは、直進性に問題はないと言っても、ハンドルにちょっと力を掛けるだけで結構敏感に車体を揺すりますし、狙いの主眼は低速コーナーに置かれているかもしれないと思ったほどです。

 同時にR1(アップハン)やFZS1000と試乗しましたが、中高速域ではビューエルは「がんばって曲がる、或いは曲げる」という感覚が常に付きまとい、真剣に速度を上げていくと決してイージーではないと思いました。

 しかし、イージーでは無いが遅くはないのも確かです。絶対性能で最新リッタースポーツあたりには敵わない(やはり、60馬力以上の差は埋め難い)が、遅れをとることも無いといったところでしょうか。

 このこと自体が、SB9R以前のビューエルからしてみると、革新的なのかもしれません。

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