•  量産サンプル品の印象

  •  取り出して見た第一印象は、ゴム屋さんの言っていた通り「ほとんど図面の印象と同じ」というものでした。最終試作とは細部の印象が良い意味で異なっており、これには安心できました。量産試打ち品
     シルエットとしてきちんと縦長の印象を持ちつつ、角部のC面取りや四隅のRの大きさも良いバランスで、立体感も十分です。
     底面にRを持たせた形状は、実に効果的に両端の密着を実現しています。

     企業秘(って企業じゃ無いですが(^_^;)とも言える見栄えのキモの部分なので、極力トップページなどではこの曲面が分からないように撮影しているのですが(笑)、ここまで書いてしまっているので特徴的なアングルを掲載してしまいます(右下画像)。

     次に、気になっていた表面の質感も期待していた以上でした。
     試作では、そのままの素材面はいくらか照り感があったものの、加工面は完全無反射なツヤ消し状態(ゴムの地肌そのもの)になっていたので、型で作った時にどちらに近い感じになるのかは気になるポイントでした。量産サンプル品
     自分としては僅かで良いので照り感が欲しかったのです。

     実際、試作途中でゴム屋さんに表面の仕上げ加工法を相談していました。
     よくプラスチック部品で見るような「シボ加工」はバカ高いことと、ゴム材の場合は表面の風合いを出す目的で「ブラスト加工」が行なわれる方が多い(費用も安い)という情報を得ていました。
     それら表面加工自体は金型製作の後からでも可能なので、まずはそのままの仕上がりを見てみましょう、と話し合った経緯があります。量産先行品

     結果として金型はかなりの精度で平面が出るので、ツヤとは行かないものの、ごく自然な照り感は得られており、ドア周辺のウェザーストリップとの視覚的なバランスも考慮すれば、この質感で十分だろうと結論づけました。

     実際の装着では、手前のアンダーがいくらか押し込みがカタイ場合が見受けられましたが、問題無いと判断しました。
     これはストライカーの裏側にガスケットが貼り付けられたものと、そうで無いものの2種類が存在しており、ガスケット無しの場合が少し寸法がきつくなるのが原因ですが、道具を使った押し込みで十分に馴染ませることが可能なのは確認できました。

     それにしても、ドアストライカーに装着したカバーが実に不思議な雰囲気を醸し出していることに気付きました(自分が作ったもの、という部分は差し置いたとしても/笑)。
     じっと眺めていても見飽きることが無い理由を最初は全く分かりませんでしたが、よくよくカタチを見ていて、ふとあることに気付きました。
     底面が曲げ戻されている分だけ、図面上は平面である表側の各部分がそれぞれに僅かずつ微妙に反って見えているのです(!)。量産先行型

     つまり「図面で描けるハズのないカタチが見えている」ことがどうやら不思議な雰囲気に繋がっているようなのです。
     右画像は曲げを戻した状態ですが、奥側のラインをよくご覧ください。
     自画自賛とは思いますが、そこはかとなく高級感が漂っているような気すらします。

     試作の時は加工面が荒れていたために気付きませんでしたが、平面がきっちりと出る金型ゆえに初めて知ることができた部分で、曲げるアイデアを両端密着のためだけに考えていた自分には、全く驚くべき副作用です。
     各平面をなるべく薄く設計していたこともこうした効果が出やすかったと言えるかもしれません。

     しかし基本的には期待していなかった部分でのプラス効果に「もしかして、こだわりのご褒美に神様が少しだけ力を貸してくれたのかも」と思えたのは事実です(笑)。

     ところで余談ですが、この「反らせた面をつなげる」形はBMWでも使われています。
     E9xの3シリーズはボンネットの形状が全て反った面をつなげて作られているんですよね…まあ、ドアストライカーカバーの場合はそこまで反りが強くは出ていませんが、偶然とはいえ、似た効果を得ていると言えると思います(笑)。

     そう、大事なことを忘れていました。もっとも基本的な「作ろう」と思った動機は果たして満たされたのでしょうか。自問自答してみる訳です。
     「これならいる?」
     「うん、これだったら欲しい…というか、無いより絶対にイイ」
     …今なら、胸を張って言えます(笑)。

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