01752/01757 PXF00367 松澤 勇治 <NRレポ>2.メーカーより
( 7) 94/01/09 00:27 01750へのコメント
2.メーカーより
○ 「開発意図やその方向性、また、開発時の苦労話などを紹介することにより、乗 って頂いているNRについてより理解を深めて頂ければ幸い」と言っていた。
○ 「市販型NRはレーサーレプリカではない(きっぱり)。相反すると思われる絶 対性能の高さと、走りの質感を高い次元で両立させる事を目標とした。特に感覚 性能を重視した点が性能のみを追求したレーサーと違う。例えば、ただ単にトル クを出すだけなら今より良いカムプロフィールがある。だがそれは、我々の求め た走りの質感には、ほど遠い特性だった。そういった事を徹底的に追求した点で、 既存のカテゴリーを超越した存在だ。」ただ聞くと、なんて調子のいい設定だと 思うがしかし、経験を含め、なるほどと思い当たることがある。
○ 「NRが示した可能性は、あえて言えばオーバル形状自身についてではなく、ピ ストンが従来の真円形状から脱したという事。丸ではない、という所に無限の可 能性がある。内燃機関の歴史が始まって以来100年にして、初めて成し遂げられ た。」
○ 「加速G感の持続というテーマにも取り組んだ。アクセルを開けた時、エンジン 回転、車速の上昇に伴って、常に必ず加速Gが増えていく特性としてある。これ が息の長い加速感につながっている。現在、世界一、長時間連続加速Gを感じら れるエンジンだ。何も加速時だけでなく、超高回転域から一気にエンジンブレー キをかけて減速する状況でも、徹底して燃調を行ない、一定の減速度としている。
通常はアクセル全閉で回転が落ちてくる状況でも、燃焼状態の違いから回転数に よってエンジンブレーキの利きは一定でない。この補正はFI(フューエルイン ジェクション)でなければ出せない特性だ。」
○ 「NRのフレーム剛性値自体は、曲げ、捻りとも VFR400R より低い。しかし、 鋳造アルミを使わないことで、フレーム端からプロアーム端まで、まるで1本の 棒のようなバランス良い捻り/曲げ特性を得る事ができた。他のバイクでは実際 の剛性値とライダーが感じる剛性感が食い違うことがよくあったが、これはフレ ームが均一にたわまないことが原因。十分な剛性を確保した上で捻り中心を下げ、 タイヤ接地点の動きは同等でも、ライダーに挙動が伝わり易い設定としてある。」
○ 「車体回りは全てに穏やかな挙動、過渡特性を目指した。急激な動きにならない 事によって、常にライダーにコントロールする幅を持たせている。これが、レー ス的な状況下では、車体のレスポンスがやや緩慢という評価につながるかもしれ ない。 ・・・ただし、決して鈍いという事ではない。」
○ 「RC30など、レーサーレプリカではそれ相応にポテンシャルが発揮できる場 所に行くまでは、乗っていて苦痛以外の何者でもないが、NRはそんな場面(た だ移動に使うというそれだけ)でも、バイクとの対話が楽しいと思える事を目指 した。」
○ 「NRをレーサーレプリカとしなかったのは、もっと長期的な目で見て育ててい きたいと思ったからだ。年々技術的にも思考的にも最速を追求していくレプリカ 群は、1年経てば旧型になってしまう宿命にある。NRをそういう次元では考え たくなかった。払って頂く金額を考えただけでも、それでは通用しない。NRを どういう路線で市販するかは最後まで社内でもめた。いつでもプロジェクト自体 がポシャる可能性さえあった。市販にこぎつけられて本当に良かった。ホンダで なければ、出来なかったろう。」発売までにモーターショーから2年の間があっ たのは、後述の馬力ダウンの件と、市販の方向性について社内でもめた為だそう だ。
以上3/8