- プロローグ
正直に言えば、自分はNR乗り失格だと思っている。
92年の購入当初はどんどん走行距離を延ばしたものの最近はめっきりそれも減り、なんとか車検だけは継続しているといった情けない有様だ。
最近では、発売当初に買う事ができなかった人達が中古などを入手(第2世代とでも言おうか)して、当時の自分等と同じような話題で盛り上がっているのを知る或いは聞くにつけ、懐かしい気持ちと一緒に、今ではとても同じようには盛り上がれない自分に、もどかしさを感じてしまうのも事実だ。
距離で5万キロ以上も乗った現在では、およそバイクの挙動など体に染みついてしまうし、視覚的な新鮮さも無い。楕円ピストン特有のフィールも既に空気のような自然さだ。
まさに古女房というのはこんな感じなんじゃなかろうか、そう思わせるような存在となってしまっている。
そして今年、NRは6回目の車検を迎える。ずっとユーザー車検で通してきた関係もあるし、ヨメさんや子供がいるのでそうはオカネも掛けられない、今回も何とか車検だけは通る最低のメンテでしのぎたい…このへんが既に情けないが、無理からぬ思いである(笑)。
実際、前回02年から今回までの走行距離は150キロ程度、なーんだ、車検場(松本)まで往復の距離が増えただけじゃねーか。<がす
ま、車検を継続させているのが気持ち的な最後の砦とさえ言える状態だ。
ここで切らしてしまえば2度と道を走る事はないであろう(笑)。
だが、そんな軽い気持ちもフッ飛ぶような深刻な事態が秘密裏に(?)進行していた事実に全く気付かない平和なワシなのであった…。
- エンジンが掛からない!(04/04中旬)
02年の車検の時にバッテリーを新品に交換。その後はすぐに乗らない事も判っていたので車検から帰ると早々に取り外し、補充電をしながら次回に乗る時のために備えていた。2年経っているとは言え、特にこの点は問題ないだろうと思っていた。
ところが取り付けてキーをひねってもメーターに明かりがつかない(!)。バッテリー上がりの典型的な症状と思えた。
「バッテリーってのは使わなくても劣化するのかな?定期的に負荷を掛けてやった方がヘタらないのかなあ…」
この時は、ガソリンも2年前のままという思いもあり、5月連休が近かったので、そこで時間を取って様子を見ればいーだろう、程度に考えてそそくさと車体カバーをかけてしまった。

- 燃圧が上がってない?(04.05.02)
再充電したバッテリーを持参して、もう一度チャレンジ。
しかし、キーをひねった途端にやはりバッテリー上がりの症状を呈する。充電したばかりなのに??
変なのは、キーオンで燃料ポンプの音がしない事。NRはインジェクション車なので、キーをひねると最初の数秒間、燃料噴射のためのガソリンを加圧するポンプ音がするはずなのだ。
おかしいとは思ったが、とにかく車とブースターケーブルで繋ぎ、セルスタート!
ところがセルは回るものの、やはり一向にエンジンが掛かる気配はない。
この時点でだいぶコトの重大さに気づき始め、青ざめる(笑)。
下手に電子技術のカタマリで動作しているような輩は、トラブル原因の追求が大変なのだ。仕方がないので覚悟を決めて、分厚いマニュアルとにらめっこしながらちゃんと見ていく事にした。
何年ぶりかにNRをバラすハメになってしまった。
- なんじゃこれは
燃料ポンプのコネクタはタンク上部に位置するが、そこを外して12Vを直接掛けても動かないようだ。
こうなるとポンプ故障の可能性が高い。さすがに寿命なんだろうかと思い、ネジを外してポンプユニットを持ち上げるとエラいモノが顔を出したあっ!(爆)。
- この世のモノとは思えない
しばし絶句。この状態ではポンプに動けという方が無理でしょ〜な。
呆れるほどに見事なサビっぷりだ。それ以上に、乗りっぱなしだった自分に呆れる訳だが(爆)素直に納得できない点もある。
保管時はガソリンを満タン近くにしてあったので、つまりユニットは液面下だ。浸かっている状態でこれほどまでに全体がきれいに(?)サビるものなんだろうか?
2年も放置すればガソリンは変質する可能性はあるし水分もいくらか含みやすいかもしれないが、ここまでとは考えにくい。
だとすると、嫌な予感がする。
このサビはここ最近のものではなく、12年間で少しずつ溜まったものなのではないかという事だ。
購入して5年以上は頻繁に乗っていたので、それはすなわちタンクが空に近い状態のまま置いておいた時間も長くあった訳で、どちらかというとそういう状態でサビが進んでいたと考える方が自然じゃないだろーか(!)。
それに普通、タンクの中をしょっちゅう覗いて部品がサビているかを頻繁に確認してるオーナーなんていないだろ。
つまり、日本全国のNRがみ〜んなこうなってる可能性が否定できないんである。
あなたのNRは本当に大丈夫ですか?
もちろん、実際の走行距離や扱いを考えるにワシの所有車両は決して良い条件とは言えないので、これほどにはなっていない事をお祈りしますが、時間を見つけてなるべく早く確認しておく事をオススメします(笑)。
簡単に行なうなら、タンクキャップを開けて懐中電灯かなにかで中を照らすだけでもおよその様子は判るはずです。
以前からたまに、キーをオンにしても燃圧を上げる音がしない場合に気付いていました。不思議には思っていたんですが、今思うとあのあたりから状態が良くなかったかもしれません。

- どうする?
パーツリストから調べた限りではポンプ単体で購入はできず、ASSYで交換となってしまう。その場合の価格は4万円以上もするので痛すぎる(笑)。前回はバッテリーを交換、今回は燃料ポンプ、では車検自体は3万程度で済むはずがトンでもない展開だ。
…と、そこにMr.Tが通りかかったのである(お約束)。<がす
「う〜ん、ひどいな。酸洗いして再メッキするか。元は亜鉛メッキだと思うけど、もっとサビに強いのないか聞いといてやるよ。純正品を買ったっていいんだけど、同じ品質なら10年後にはまたこうなってるかもよ〜」
もっともな話である。
だが問題もある。ポンプがイカレていたらやはり基本的にはASSYで購入だ。開発当時はこのポンプは車のトゥデイのものを基本に設計されたと聞いているが、今現在、同等品を探して根性で組み合わせるほど元気はない(笑)。
「燃料ポンプがほんとにダメになってるかはワカランよ。吸い込みのフィルターは穴とか開いてないみたいだし、バッテリーが落ちるのは多分ポンプが中でロックして電気流れっぱなしか、コネクタの端子がサビでショートしてる可能性がある。まあ、しばらく貸してみな」
ところでコネクタのパーツはブラスチックでカシメてあるので、それを取らなければサビ取りやメッキ処理は出来ない。
「仕方ないからカシメ部品は図面引いて作ろう」
ユニットごと手渡されて、久しぶりにMr.T活躍の場ができたのであった…(^_^;。
- まずサビ落とし(04.05.10)
Mr.Tの手によりまずはサビ落としが行なわれた。市販品を使っただけでも画像くらいにはきれいになるようだ。当初はベースの板金部などボロボロではないかと思われたが、意外に浸食が少ない。これも不思議だ。
何か自身がサビたと言うより、サビを寄せ付けていた、という感じにも見て取れる。幸いにして燃料ポンプは生きているという。どうやらコネクタ部がサビてショートしていたようだ。
燃料フィルタは基本的に定期交換部品と考えて、今後の事もあるので新しいものを発注した(こちらはフィルタ単体で取れる)。

- 再メッキへ(04.05.13)
表面処理は再検討したが、結果的にはやはり亜鉛メッキがいいだろうという結論に落ち着いた。さすがに溶接部の奥の方は薬品だけではサビが取りきれないところがあり、酸洗いをしてから再メッキ処理が施された。
仕上がりは純正の状態よりかなり金ピカになってきた(^_^;。
カシメ部品も削り出されてきたので、後は元通りに組み付ければもう10年以上は…持つかな(爆)。
- 朗報
ところで所有のNRを確認してみて冷や汗をかいている人に朗報だ。
Mr.Tが、困っている人のためにこのサビ取りの処置を広く一般から受け付けるという。サビ取りやカシメ部品の削り出しなどで手が掛かっているので¥10000を目安に、という事のようだ。
もちろん燃料ポンプが生きていなければ使えないので何の意味もないが、動作するかどうか程度ならそれも含めてこちらで確認するという。ASSYで新品を購入すると4万円以上するので、ありがたいと思う人もいるんじゃないだろうか。
フィルターを交換したければ部品代だけの加算で応じる、処置に要する期間は約1週間ほしいと言っているが、詳細はこちらまで連絡して確認してみるといいだろう。
- 組み付け…られなかった(^_^;(04.07.03)
一応、元の形になった燃料ポンプユニットを組み付けようとタンクに残ったガソリンを吸い出して確認のためにタンクの底を覗き込むと、これまた唖然(爆)。
ポンプユニットがあれだけサビていれば当然かもしれないが、燃料レベルセンサも同じようにサビサビだあ…(既に疲れている(^_^;)。
そう言えば、走行中に燃料レベルを示すメータの針が時々ロックして動かない事があったのも、あれはサビて動きが悪くなっていたのか…(爆)。<思い当たるフシがありすぎるぞ、オマエ(^_^;。
絶対に常に液面下にあるはずのこの部品でさえサビサビとは、やっぱりほとんどのNRがヤバいんでないかいという思いを強くした。
さすがにこれを放置して組み上げるわけには行かないので、タンクまで取り外すはめに(^_^;。
パーツリストではこのユニットは¥4200(12年前に(^_^;)なので、そのまま新品を買ってしまってもいいかなあ…という気がしているが、Mr.Tの見解をまず聞かねばなるまい。
- 窮地に(04.07.18)
Mr.Tによれば周囲のサビは一応落としたものの、センサ自体が電気モノという事で寿命や信頼性の面で得られるメリットが少ないという判断から、ここは部品を新調する事にした。
価格は¥5200で、12年で約2割アップというところだ。
サビを取った状態と新品では画像ほどに状態が違う。中央はカバーを外したセンサ部の構造。右の画像はMr.Tの手によりクリーンナップされたタンク内部。先日の画像と見比べてほしい。
この汚れはガソリンの成分によるものだと思われるが詳細は不明。長期に渡る使用とは言え、なぜこれほどまでに付着したのかは解らない。ただし尋常ではないV4エンジンの熱による影響があるだろうと想像できる。
この後、タンクを取り付けてガソリンを入れたが、やっぱり燃料ポンプが動いていない事が判明!Mr.Tは実際にはポンプの作動音を聞いていないため、通電してやや唸る感じをもって「動いている」と判断したそうだが、本当は結構大きな作動音がする。まあ、致し方ないところではある。
それにしてもマズい事になった。
ポンプが動かないのではいくらステーのサビを取ったところで何の意味もない(爆)。なぜなら既出の通り、ポンプを買うとなればステーは(実は先日購入したフィルタも(^_^;)付いてくるからだ(火暴〜)。
再度Mr.Tにポンプ単体で調べてもらったが結局「ダメそう…」という結論に落ち着いた。
もともと安く上げようという目論見はこの時点で崩れた訳だが、それならそれで燃料ポンプの注文を急がなくてはならない。
バイク屋に連絡を取ると、12年前に3.8万円していたものが現在は約4.4万だと。くう〜っ、シビレてしまう(笑)。それよりも問題は残りの在庫数。日本全国にあと5つしかないそうだ。ワシが一つ取ったから残りは4つ。争奪戦にならない事を祈る。
新たに注文したので、今ある動かないポンプは後学のために後日割ってみる事にした。
- 動かないポンプを割ってみた(04.07.22)
インペラが壁面に張り付いて動かなくなっていた。その原因はどうやらタンク内面を黄色く変色させていた成分と同じものによるようだ。俗に「ガム質」や「ワニス」と呼ばれているものだろうか?
Mr.Tの話では、もしかするとタンクをキレイにしたクリーナを流し込んでいれば、張り付き自体は取れていたかもしれないと言う。しかしサビはやはりポンプ内部にも及んでおり、もしそうして動いたとしても長くは持たなかったかもしれないと想像できる。
状況を悪くしているのは確かにメンテナンスも一因かもしれないが、こういったポンプをガソリンの中に浸けてしまうといった構造のために影響が広範囲に及んでしまうののもまた事実だろう。
ホンダとしては当時、燃料噴射式のバイクのノウハウはそう多く持っていなかったはずだから、自動車方式の延長線上でNRの燃料系を設計しただろうが、(もちろんテストはしているだろうが)熱の影響などを少なく見積もりすぎてはいないだろうか…。車では一般的に騒音が押さえられるのでこういったタンクの中にポンプを沈めてしまうといった構造が取られるのも確かだ。
しかし、タンクとエンジンの間にはエアクリーナボックスがあるが、いちばん低いタンク底面はV4後ろバンクの真上にある。もともと後ろ気筒は熱的に苦しいため、走行中にはガソリンが相当な高温になっているのは間違いない。あまりの高温でガソリンの変質が進みやすい、というような心配は否定できないと思うのだが??
- 購入したポンプを取り付けたが(04.07.25)
頼んだポンプが来たので取り付けてみた。ガソリンも入れてキーを捻ると確かに懐かしいポンプの作動音がする。しかしエンジンは掛からなかった(泣)。
バッテリも新調したが、この時はまだ取り付けずに電源は自動車からブースターケーブルを使って取った。コレ幸いにと今までに経験無いくらいセルを強烈に回しまくったが、やはりダメ…。タンク、ポンプ共にこれだけダメージを食っているとなると、インジェクタが無事な訳はないか(^_^;。確かに詰まっている可能性は否定できない。
闇雲に回して今度はセルモータに負荷を掛けて壊した、とかでは笑えない。落ち着いてマニュアルを見直し、怪しそうな部分を特定してみた。
本来なら、燃料圧力を測定するプレッシャーゲージなどがあればきちんと手順を追って調べられるが、最近はインジェクション車が増えてきたとは言え、そんなトラブル対策の計測器をバイク屋がきちんと備えている訳ではない。
いっそホンダに直訴して借りてみようかとも思ったが、まずは想像力を働かせてみることにした。
点火系には問題が無いという前提で燃料系のどこかに異常があるとするなら、燃料通路の圧力が規定値に制御されないか、インジェクタの詰まりのどちらかである可能性が高い。
NRの噴射制御はマニホールド負圧+2.55kgの圧力に通路を保つようプレッシャレギュレータで動的に圧力制御を行なっている。こうする事により噴射量の決定はインジェクタの開弁時間だけの問題になるからだ。もしレギュレータがおかしくなって圧力が低かったり高かったりすると、噴射量が想定したものと違ってしまいエンジンが掛からない事になる。或いは、インジェクタが詰まっている場合は問題外だ。
確認のための作業では実は大変さが違ってきて、インジェクタの場合はFIユニットがそのままでも1本づつ取り外す事が可能だが、レギュレータの場合はフレームが邪魔をしてFIユニットを車体から取り外さないとバラせない。
以前、輸出用のインシュレータに交換するためにFIユニットを外した事があるが、これが死ぬほどタイヘン(笑)。エンジンとの結合は8つのインシュレータによるが、抜こうと思ったって抜けるようなもんじゃない。最後にはシリンダーヘッドとの間にバールを突っ込んでやっと外れたというシロモノだ。こんなもの2度と外したくないと思ってる手前、レギュレータには問題がない事を祈りたい気持ちだ(笑)。
ところで、悪あがきのつもりでWAKO’Sの「フューエルワン」というガソリン堆積物の除去を行なう清浄剤を使ってみた。僅かでも溶けてくれればもうけもの。噂では結構良いらしいが…。
気持ちを切り替えて、次はやっぱりインジェクタ周りのチェックを行なう事にした(もう疲れた(^_^;)。
- インジェクタ周りを確認する(04.07.31)
NRは可変吸気ポートを持っている。低回転域ではポートを絞ってトルクを稼ぎ、高回転ではボックス横の吸入口を解放して一気に大量の空気を流入させる仕組みだ。
ビックリするのは、輸出仕様はエアクリーナボックス内にエアファンネルを持っている事(!)。高回転域ではまさにファンネルから直接吸気する(もちろんクリーナエレメントは通過するが)のとほとんど同じ構造になっている。
普通の人はあまり見た事ないだろうから、貴重なショットと言える(笑)。

前述のようにインジェクタだけならFIユニットを車両搭載状態のまま外す事が出来る。
直径0.5mmほどのピンが引き込んで隙間から燃料を噴射するようになっているが、8本のウチ2本が詰まっていた。これじゃ〜エンジンは掛からんわな(笑)。
買うとなると1本約1万円(!)。幸い、フューエルワンの原液を垂らしてピン部分を押していたら2本とも復活した。結構頼りになる溶解力(?)だ。ちなみに右端画像のインジェクタは詰まっているように見えたがそうではなかった。
インジェクタの通路自体にはタンク内部のような変色は見られなかったので、途中のプレッシャレギュレータの方は多分問題無いだろうと勝手に決めつけて(爆)組み上げに入る事にした。
- 再組み上げ…エンジンは掛かるか?(04.08.01)
インジェクタ、エアクリーナ、タンクと取り付けてガソリンを入れ(バッテリーはやはり自動車からブースターケーブルで取るようにしたが)祈るような気持ちでセルスタート!
…しかしやはり、約2年もの間眠っているエンジンは簡単に目覚めるものではない。そうは言っても明らかにインジェクタが詰まっていた先日とは様子が違い、もう少しという実感はある。
燃料が吹いている確信さえあれば後は普通のバイクと同じように、エンジンが掛からない理由を追えば良い。
すぐに疑うのはプラグのかぶりだ。インジェクションといえど当然しっかり燃料を吹いているので火が入らなければプラグは濡れてしまう。
NRは、後ろバンクはタンクを持ち上げ、前バンクはオイルクーラーを手前に倒すという面倒な手順を踏まなければプラグキャップを外す事すら出来ない。当然これらを想定して既にその状態でセルを回しているので、この時点ではプラグを外して確認する事はまだ容易だ。
するとやはり、しつこくセルを回した影響で結構濡れた状態であり、これではエンジンは掛からない。
8本あるプラグを狭い場所に手を突っ込んでそのたびに抜き差しするのはかなりタイヘンな作業だが、2度、3度とこれを繰り返すと、ついにNRは細々とだが自力でアイドリングを始めた。
…長かったぁ〜、ここまで来るのがぁ…。はあ〜。
懐かしいが、確かに聞き覚えのある音だ。一度ファンが回るところまで水温を上げた後は何度もブリッピングを繰り返してみる。ストールも特にしないしアイドリングの安定度も問題ない。全てが機能している感じはするが、さすがに吹かした時のレスポンスはまだまだ本調子ではない。やはり実走して負荷を掛けないと調子は戻らないのかもしれない。久しぶりに聞くと結構エキサイティングな音がするかな(笑)。
ところでこんな事を言うのもなんだけど(自分のメンテに問題があったのは確かだが)これだけ手こずらされてしかし手も掛けてやって、今頃になってなんだかやっとNRに対して少し愛着が湧いたかもしれない、と思った。
確かにこういったバイクは、5万キロ以上も乗って感覚的に馴染んでいるとしても、正直なかなか「愛着」という言葉が出るほどの感覚は持ちにくい。それほどまでに特別、特殊な構造、機能、価値を有した乗り物と言える。
まあ、エンジンまでバラして楕円ピストンを直接拝みたいとは思わないが(さすがにそこまでは手に余る)普通のオーナに今回のようなところまで手を入れられる、或いは構造が解っている人はそうはいまい。
もちろんそんな事を知らなくてもNRは走らせられるし、知る必要もないかもしれないが、ただ単に磨いて乗っているだけでは、なかなか「愛着が湧く」という言葉までは口に出来ないのも事実だろう。
それは即ち、バイクと人間の感覚的な距離そのものだからだ。得体の知れないものに対して愛着は湧くまい。

- 換えられるものは換える事に(04.08.04)
腐食が進んでいるネジ、ステー類は可能な限り交換する事にした。値段を調べると小物であれば意外に安いし、磨いているよりは効率が良い。しかしあっちもこっちも頼んでいたら部品が山のようになってしまった。これってもしかして整備とか修理じゃなくて既にレストアじゃん(爆)。
あれ?でも頼んだものにフロントブレーキマスターとかがあるぞ(おい(^_^;)。フルードによる腐食がだいぶ進んでいるのがずっと気になっており、思い切って注文したが、NRなんていう文字が入っているもんだから、マスターだけで2.4万円(!)もしてしまう。クラッチ側はキャップだけの交換でガマンする事にしたがこれだけで3000円超(!)。
それにしても在庫の残りがどちらも2〜3個しか無いようなので、これまた確保競争にならない事を祈る(笑)。ブレーキ、クラッチ関係のメンテをした事のあるNRならまずここに腐食が出るだろうから、気になっているオーナーは多いのではないかと思われる。
この機会にめぼしい部品は全て在庫数を確認してみたが、正直本当に心許ない残数だった。今回頼んだ範疇では幸いB.O.(バックオーダー)となる部品は無かったが、いよいよ部品の入手が怪しくなってきたという印象だ。
- フロントフォークを再塗装に(04.08.08)
気になっていると言えばフロントフォークボトムケース前側の腐食もそうだ。やはり凍結防止剤の影響が大きいと思われるが、そうは言っても喜んで冬場に走ったのは始めの数年程度。それが経年と共にこれほどの状態になるとは…。
Mr.Tが例のステンコートで再塗装してくれるという話になってフォークを外す事にしたのはいいが、たまたまステアリングヘッドパイプに差し込むタイプのリフターを別の場所に置いてきてしまっていたため、エンジン下に車用のジャッキを噛ませて前側を浮かせた。
実はこの状態はバランス的に大変キビシく(笑)、塗装が仕上がる一週間は心臓が縮み上がる思いだった(^_^;。地震でも来ればカンペキにアウトなので、オススメできない。
- オイルクーラのサビ取り(04.08.13)
画像中段はオイルクーラ(上下はラジエター)だが、この両端の部分が凍結防止剤と思われる腐食でヒドかったのをサビ取り剤を使用してみた。最近の市販品は非常に優秀で、想像以上にキレイになる。このサビ取り剤の名称はMr.Tのヒミツという事であるので伏せさせていただく(笑)。
だが実は、この薬品を見くびったために後日エラい目をみたのであった(爆)。
- 再び前輪が地に降りる(04.08.15)
再塗装されたフロントフォーク(6ポッドブレーキの加工状態も見える)。ステンコートスプレーの色は相変わらずシブい!?リヤブレーキホースも交換した。ホースが新しくなるだけでずいぶんと印象が良くなるから不思議(笑)。

なんとかタンクの熱対策も出来ないかと頭をひねった。底面には一応遮熱目的のゴム板があるが、これにさらに保冷用のクーラーバッグを切った貼ったしてみたが…。材質のビニールがあまりの高温で溶けるって事はないだろな(笑)。効果のほどは疑問(^_^;。

- シートカウルが付く(04.08.16)
やっとシートカウルが付くところまで復活。画像右のツノ部とメータとを繋ぐゴム部品は新品(片側約3000円)。プラスチック、ゴム系は経年変化による劣化がどうしても現れやすいポイントだ。
ところで笑えない事態が発生した(笑えるが(^_^;)。調子に乗って前述のサビ取り剤に計40個近くある外装関係のネジを浸けたところ、使用方法にあるとおりに希釈して使ったのだが、もくもくと煙を上げてメッキがみんな飛んでしまったのだ(!)。これにはホントあせった。信じられないくらい強烈な薬品で、こんなものがホームセンターで平気で売られているのだからすごい世の中になったもんだ(違うか(^_^;)。
あわてて今度はMr.Yに連絡を取り、なんとか1週間で再メッキしてもらえないか頼み込んだ。もともとカウルボルトのメッキはあまりピカピカしない少し光沢を押さえたタイプ(多分ニッケルメッキ。もちろん意図的にそうなっているのだろうが)だが、どうせなら光らせてしまえ、とクロムメッキされる予定になっている。
今週末で組み上げないと8月中になんとかしたい車検が危うい(^_^;。これはゆゆしき事態と言える。
- 再メッキ済み(04.08.20)
画像左がクロムメッキされたカウルボルト。右のメッキのはげたものと比べて欲しい(恐ろしい(^_^;)。それにしてもきちんと週末までにメッキを上げてくるとはMr.Yホントに助かる(^_^;。
右側の画像はMr.Tによって再塗装されたラジエターガード。本体のサビ具合とは違ってさほど状態が悪くはなかったが、この際だからとサビ取りと再塗装を行なってもらった。ステンレスコートスプレーの上からクリアー仕上げ。画像に映っているのはワシではなく息子(当然だ)<がす(^_^;

- 前回りの電装系を整備(04.08.21)
電装系ではレーダー探知機の載せ替えが懸案となっていた。従来はベストワンパルスバイクという機種を使っていたが、ノイズを拾いやすく、ある一定回転からパッとクラッチを切ってアイドリングさせるような状況の時に反応を拾ってしまうような状態で、これはどうにかしたいと思っていた。
別項のアップハン化したR1にはTANAXのVZ−400という比較的新しい機種(中古で入手)を使って好印象だったので、機会があればコレを別に入手して載せ替えたいと思っていたのだ。
バイク用のレーダーというのは一般にランプ出力を持っているが、NRにはなるべく自然に目立たないように装着したいと思い、少し回路を組んでデジタル速度計のバックライトとウィンカーインジケータの両方が同時にフラッシュするように繋ぎ込みを従来から行なっている。レーダーのランプ出力の方式はメーカーによって様々なので、載せ替えを狙う場合は動作に合わせて回路を変更しなくてはならない。
もう一点、問題なのは探知機本体の装着場所だ。
こちらも「いかにも」という取り付けは避けたいのでフロントカウルに内蔵する方法を以前から取っていたが、これには裏話があり実は画像のベストワンパルスバイクは本来のカタチではない(笑)。これ、ケースから中身を取り出した状態なのだ(^_^;。
というのは、偶然プラスチック製の本体ケースに冷却水が掛かったものを洗い流そうと脱脂洗浄剤を吹き付けたところ、なんとボロボロとプラスチックケースが崩れ去ってしまったのだ(爆)。
幸か不幸か小さな中身である事が判明したので、カウル内部への装着が可能となったのだが、今回のVZ−400の場合は技術の進歩と言おうか、同程度のサイズにまでなっているので、装着は従来と同じ場所に可能だった。
動作テストでは、ノイズ等の影響もほとんど受けず、誤動作する様子はない。基本的にはOKだが、ただ繋ぎこんだランプの光り方が少し弱いようだ。これはもう少し回路を考えなくてはならないが、今回の組み上げでは見送るしかない。
少し宿題が残ったカタチだ。

さすがに10年以上経つとスポンジ系は全滅だ。ライトユニットをくるんでいるものもボロボロと崩れ落ちる状態になっているので新調したいところだったが、なんとコレ、パーツリストでいくら探しても部品が出てこないのだ(!)。
仕方ないのでホームセンターで「エプトシーラー」とかいうスポンジを買ってきて代用してみた。このスポンジは前回りからの雨水の侵入を防ぐのか主目的かと思われるが、ライトユニットはかなりの高温になるので、ある程度の耐熱性も必要だ。特に調べもせずに使ってみたが、後からインターネットで検索すると、そう悪いモノでも無さそうだ。

- 一気に組み上げる(04.08.22)
クロムメッキされたカウルボルトが意外に新鮮(笑)。
NR専用のタンクバックは12年モノなので実際には画像で見えるより使い込んだ感がある。
これにも裏話があって、「軒下」をご覧になった方はご存じだと思うが実はタンクバックを2セット持っているうちの古い方を装着して使っている。限定で100セットしか作られなかったものなので、見方によってはNR本体よりも希少(^_^;。
実際、NRで出掛けてみると痛感するのがモノ入れの無さであり、シートカウルの中はマフラーが占めているので小物入れはあるとは言え使い物にはならない。従ってよほどの近距離をチョイ乗りするのでなければ必然的にNR乗りはデイパックなどを背負って出掛ける事になるのだ。
しかし意外にスポーツライディングにはこの背中の荷物は気になるもの、なるべくなら使いたくない。そんな時に重宝するのがこの専用タンクバックなのだ。ワシ的にはいろいろ用意された(?)オプションの中で最も使用頻度の高い有用なものであるという認識だ。
「NR乗りの背中にはディパック」
そんなイメージ持たれたくないだろ(笑)。
ところでテスト走行も兼ねて本当に久しぶりにNRでバイク屋まで出掛けた。もちろんバイク屋も久しぶりだったので懐かしがったが(笑)確かにNR独特の乗り味というものがある。
しなやかな感じを受けるフレーム、エンジンの伸び上がり感の素晴らしさを、改めて今ならR1のパワーに慣れた身ゆえ、回し切りまでの感触を余裕を持って楽しめる。意図的に調教された出力とは言え、世界で最もプラスの加速Gを長く感じる事の出来る乗り物(現在でも)、のふれこみはダテではない。
R1に比べるとややアンダーな特性も、バイクの性格を考えればヨイ味付けと思える。
久しぶりの取り回しでは重量にビビって「本当にこんなもんでヒザ擦ってたのか」などと思ったりもしたが、実際走らせてみるとなんら不安を抱かせない。全てが懐かしい感覚だ。
ただ、雨に祟られるバイク、というジンクスは自分の中で破られたのか、どうか(^_^;。このテスト走行でバイク屋に寄った後でやはり雨が降り出し、知り合いのクルマ屋にNRを預けてそのまま帰る事になってしまった(爆)。
せっかく細部まで手を入れたのに早速汚してしまったのでは悲しすぎる。しかもテスト走行だ(^_^;。また手を掛けられる時間的余裕が得られるかも分からない。それらを考えれば、バイクを預けて帰る手間など簡単なものだ。
さて、後は車検本番を迎えるだけとなった。
- いよいよ車検(04.08.26)
偶然だがNRの車検はMr.T所有のCBXと時期が重なっているので、毎回都合を合わせて一緒に松本の陸事まで出掛けていたが、今回はNRの修復(笑)に時間が掛かったために普通なら8月の頭に行なっていたものがここまでずれ込んでしまった。
そうすると本来であればCBXの車検が切れてしまうが、Mr.Tが気を遣ってくれて同じ日に検査できるように仮ナンバーを用意して松本に向かった(NRはぎりぎり車検期間内(^_^;)。
あまり乗ってないので少しばかり車検を切らしても問題ないという実情はあるようだが(笑)そうは言ってもMr.Tの律儀さには感謝である。
ところで、いざ検査開始してみると、とんでもない不具合が発覚!なんと、左ライトのハイビームが点灯しない(゜o゜)!!
それほどハイ側を使う訳ではないので、あまり球切れするという意識がなく、実はしっかり確認しないままに来てしまっていたのだ(なんとまあ(^_^;)。
一体どうしたものか、近くの店にバルブを調達しに行くのも時間が掛かるし…うーむ(^_^;。
… 中略(おいおい(^_^;) …。
何とか検査合格して午前中に新しい車検証も発行してもらい、結果的にはいつもと変わらない時間配分で終了する事が出来たが、正直今回は今までで一番気疲れした車検だった…(詳細はちょっとヤバすぎて書けないなあ<がす(^_^;)。
そう言えば、車検証に走行距離が入ったり、有効期間を示すシールが小さくなったりと従来とは少し変わった点があった。
まあ、いろいろあったがNRはめでたく復活して車検も継続することに。
今後の課題は(情けないが(^_^;)いかにして調子を保つかという点に集約されそうだ。毎回車検のたびにこのようにバラしていたのではとてもタマらんので、なんとか違うテを考えなくてはならないだろう。
「夢は、つきない。ここから、始まる。」はNRのカタログにも記載のあるコピーだが、「保守はつきない、またここから始まる(笑)」てな台詞が浮かんでしまうようではイカン(爆)。自分自身への戒めの言葉と受け取っておこう。

- 保守策の一環(04.11.14)
とにかく乗る時間がない場合に真っ先にダメージを受けるのはバッテリだろう。今回、車検を受けるに当たって新品に交換したとはいえ、これだっていつまで持つかわからない。
現に、前回の車検時にやはり新品交換したバッテリは、即外して補充電しながら保管していたのに全く持たなかった。
頻繁に負荷を掛けてないと、どうやら一気に放電する能力が落ちて結局ダメになる…ようだ。そう考えると、乗ってやる以外には基本的にイイ手はなさそうだが、ダメ元で別の手を使ってみることにした。
それは、ソーラー充電器(セルスター社製SB-300)の常時接続。
補充電よりは頻繁な充電効果があるだろうが実際にところはわからない。とにかく今までとは違ったことをやってみたという程度の感覚だ。

合わせて、少しまともな車体カバー(平山産業製透湿防水バイクカバー)を調達した。
このページの上の方にある画像のカバーはNR購入時にバイク屋が付けてくれたもので、数年もすると生地が透けてきて雨などがしみこむような状態となっており、わざわざカバーの中を湿度の高い状態にしてしまっていた(爆)。
ご存じの方も多いと思うが、NRには発売時にオプションとしてNRロゴ入りのゴアテックス製のカバーが用意されていた(確か価格は5万円)。まあ、カバーを掛けた状態でまでNRを主張する気はなかったし、もともと消耗品と考える方が間違いないので購入しなかったという経緯がある(もっとも、重要だったのはその価格の高さであるのは否定しないが<がす(^_^;)。
このカバー、価格は1.5万程度だが現在の経済状況を考えれば、ガンバった方である。ちなみに一緒に購入したR1用は1300円。(^_^;<がすがす

- エピローグ
NRにとっての2004年は購入以来もっとも深刻な問題を抱えた年だったのは間違いない。
なんとか車検を継続する状態にまでは持って行けたものの、気になる点が全く無くなったわけではない。
ヘッドライトのHI側が灯かないのはそのままだし(後日談だが、ついに両側とも灯かなくなった(^_^;)、油温計の針が動作不良っぽい兆しがある。それに自分でイジった部分とはいえ、レーダーのランプ出力繋ぎ込みが不十分だし、実は削り出したアルミのキャリパーピストンが一部外観から見えるだけでもメッキが剥がれて腐食が進んでいるのも気掛かり…。<おい
カバーを外すところから始まり、カバーを掛けるところで一通りのまとまりを見せた”再生編”だが、まだまだ課題山積の状態で2004年の年越しを迎えることとなった。